夕空

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 ドアを押し開けて屋上へ飛び出した。  だが、無情にも、その光景は刻一刻と姿を変え、由香里の影絵は見えなくなっていた。  街の彼方へ陽が沈んだのだ。  はあはあと肩を揺らしながら息を継ぎ、既に暗くなった夕空を、僕は茫然と眺めた。  バカげている。  由香里は死んだのだ。  2年前に39歳の若さで呆気なく逝ってしまった。がんだった。  もう、由香里は、この世の何処にも存在しないのだ。  由香里……
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