展望

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翌日は、カラリと晴れた。 僕はポートタワーに来ていた。 この前よりも人が多い。天候が良いせいだろう。 展望台からの眺望は、それだけで新鮮な感動をもたらす。 僕は人垣を縫うようにして、ゆっくりと何度も展望室を周回した。 地上からは決して見ることの出来ない視点で、それは、まるで鳥のように街並みを俯瞰する。 そればかりか遥かに遠くを見渡して陸地に居ながら雄大な海の沖合いを航行する貨客船まで捉えるのだ。 地上に居ては見えない物が展望台なら見通せる。 これは人生経験と、その知恵に例えられるかも知れない。 若いうちは苦労知らずで、自分中心にしか発想出来ないものだ。 好きなだけ自分のやりたい事に時間を費やし、その事だけの成否で一喜一憂する。 その先を見ていない。 自分の役割だ。 この世に生まれた事を意義のあるものとするには、どこかで人生を展望して、自分の役割を自覚することだ。 僕は、昨日それを学んだ。
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