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僕は、もしかすると王先生の術中に落ちて、丸め込まれたのかも知れない。
だが、高梨部長の手駒となって無為に生きるのは今となっては、もう詰まらない。あの仕事に情熱を燃やせない。
やってみようと思うんだ。当面の生活費と香織の学費は退職金でまかなえる。
『それで生計が立って、やり甲斐があるなら、いいんじゃない?』
胸の内に居る由香里の目元がほころんだように思えた。
由香里の笑顔が後押しをしてくれたように感じた。
うん。やってみる。見守ってくれ。
雲が切れたのだろう。
富士山の頂が青い空に映えて、より白く、より輝いて見えた。
ー了ー
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