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やがて彼女は営業部へ異動になり、僕は転勤で神奈川へ赴任した。
僕は赴任先で図書館の職員であった由香里と出会い、結婚し、その二年後に娘をもうけた。
朱美は、その後、営業部に長く籍を置いていたが、昨年の夏、管理部へ異動して部長補佐の席に就いたのだ。
「それで……? 僕に訊きたい事とは?」
「ええ。さっき耳にしたのだけど……MBOへ動き出したって話は本当なの?」
「ああ、経営陣による自社株買収だろ。このまま上場を続ければ外国企業に乗っ取られるのは時間の問題だからね。いや、そうはならないかも知れないが、K社の前例があるから」
「やっぱり本当なのね。でも上場を廃止したら資金調達が難しくなるわ」
朱美は細身のタバコをくゆらせている。
「国内需要がしぼんでるんだから新規の設備投資はやらないんだろう。現に工場を二つ操業停止にしたしね」
僕もタバコに火をつけた。
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