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「まだ、帰らないの?」
「うん、もう少しで切りがつくから、仕上げちまうよ」
「じゃあ、それが終わったら、飲みに行きましょうか? ちょっと面白いバーを見つけたのよ」
「バー?」
「ええ。もう、ずいぶんな、お年のマスターなんだけど……いい味、出してるの」
朱美の、にっこり顔を見るのは久しぶりだった。
媚びを売らない彼女にしては珍しいことだ。
赤い口紅が妖しく誘っているようにも見えるが、気のせいだろうか?
いや、資材部で共に苦労した戦友にだけ見せる隙なのだろう。
僕は、それを断らなかった。
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