無自覚、自覚

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もういっそ蹴り飛ばしてやろう、とか考えていたら目の前に出てきた腕に強く後ろへ引っ張られた。 それにバランスを崩して、引っ張ったやつの体に倒れ込む。 それが誰だかなんてすぐにわかったが、なんでこうなった? 「お前らまだ懲りないみてぇだな。うちの仲間に手ぇ出すんじゃねーよ」 ぐいとさらに引き寄せられ、よくわからない状況に呆然としているとヴェルテの険をはらんだ声が聞こえる。 それに奴らはあっという間にいなくなる。 よほど痛い目を見たんだろうな。 その様子を見ながら考えていると、回されていた腕が解かれる。 って、よく考えたら抱き締められてたのか? 今になって状況に思い至って、おれは恥ずかしくなる。 慌てて何か言おうと振り向けば、ヴェルテはおれの右腕を掴んで歩き出し、バーをでてしまう。 「っ、ヴェルテ!離せ、痛い!」 完璧に自分のペースで歩くやつになんとかついて行くも、掴んでいる手の力におれは何度も名前を呼んで訴える。 しかしあれほど歩き続けたこいつは今度は急に立ち止まり、その背中にぶつかる。
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