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うとうとと眠りに落ちかけていた意識は、微かに軋む音に現実に引き戻される。
瞼を持ち上げれば目の前には、つかれた手。
その腕を辿れば、一緒に眠りについたはずのヴェルテが起き上がっていた。
「ヴェルテ?」
「!あ、わり。おこしちまったか」
明かりも消え、薄暗い部屋でぼんやりとどこかを見つめる横顔に何かあったのかと声をかけたら、はっと振り向いたやつはふと表情を緩める。
それからついた手でくしゃりと髪を撫でられた。
「何かあったのか?」
「……いーやなんでもねーよ」
しかしおれの問いに少し間を置いて答える顔とそれまでの横顔は、先だってバーで見たのを思い出させた。
だからその手を払いのけ、体を起こしベッドの上に座り直し見返したらすっと目を逸らされてしまう。
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