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「お前は人がそう言うと食い下がってくるくせに、自分のことは誤魔化すんだな」
わかってはいたが、今日はなんとなく気に障ったおれは以前から思っていたことを口に出していた。
「だいたい顔に出やすくて隠し事に向いていないくせにだな……」
「あー、わーった、わーったよ。もうそれくらいで勘弁してくれ」
おれの言葉にぎくりと肩を揺らすやつに、それだけですますつもりだったのに一度出してしまったら止まらなくなって、ぐちぐちといい重ねてしまう。
けどふいに腕をとられ、抱きしめられたかと思うと頭上から言葉が落ちてくる。
「別に隠すつもりはないんだけどよ。ただ、俺自身にもどう言やあいいかわからなくてさ」
それから体を離し、顔を寄せてきたヴェルテに少し困ったような表情を向けられた。
「おかしな話なんだけどさ、時々変な夢を見んだよ」
「夢?」
ただ話はしてくれるようでぽつぽつと続けられた内容を、おれは抱きかかえられたまま大人しく聞く。
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