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「自分勝手だとは思うけどよ、わがまま聞いてくれねーか」
「……」
腰に回された腕でさらに抱き寄せ言い重ねられた言葉に、おれはヴェルテの背に手を回し少しだけ悩む。
要するにこれ以上の詮索はするなと。
ただそれが拒絶ではないんだと。
そう言われたら食い下がれないのをわかって、いるんだろうな。
「……仕方がないな。お前がそれで十分だというなら」
なんだそれはと言い掛けたが、おれはそうとだけ返す。
「ただし一人で抱え込むなよ」
「おう」
そしてありがと、という台詞におれはなんとなくぎゅっとヴェルテに抱きついた。
さらに小さく付け加えたおれにヴェルテはひょいと顔を上げ、にっと笑顔を作って唇を重ねてくる。
まだほんの少しだけ引っかかりはあったが、今はこいつが笑っている。
そのことだけで満足することにして、おれは離れかけた唇を追って口づけるのであった。
end
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