キスの行く先

3/14
前へ
/223ページ
次へ
事の起こりは一時間ほど前。 渡すタイミングをはかりながら屋敷内をうろうろしていた。 と、不意に頭上から話し声がして立ち止まり上を仰いだ。 その目に映ったのは二階の廊下でロッサと話すヴェルテの姿で、おれは思わず近くの階段の陰に隠れる。 そのまま離れてしまえばよかったのに、盗み聞きに近い形で二人のやりとりに気を取られてしまった。 断片的に聞こえるやりとりから、バレンタインということでロッサが仲間内にお菓子を配っているようだ。 本来様々な思いを伝える日だから当たり前の話なのだが、先を越されたことが少し気にくわなくて。 でも今更出ていって何を言うこともできないのはわかっているから、ただロッサが居なくなるのを待っていた。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加