キスの行く先

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「ほぉ……俺が探し始めてもうかれこれ一時間は経つがどこらへんがすぐなんだ?」 しかしやつには言い訳などお見通しのようで、顔を背けたおれの頬を両手で挟んで正面を向かせられた。 そして触れた手の温もりで自分が冷え切っているのを改めて知らされる。 「だいたいこんなとこでなにしてたんだよ」 「っ、お前には関係ないっ!」 嬉しいはずなのに、ロッサとのやりとりが目の前をちらついて、覗き込んだヴェルテの手を払いのけた。 と、その拍子に後ろ手に隠していたチョコが手から離れる。 「ん?なんか落ちたぜ?」 「あ……」 しかもはっとして拾い上げるより先に、気がついたヴェルテに拾われてしまった。 「返せっ!」 「何慌ててるんだよ」 恥ずかしさから掴みかかるが、ヴェルテはしれっと腕をあげてしまう。 今更、しかもこんな形で渡したくないのに……!
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