キスの行く先

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貰い物か? 思いついた嫌な予想に俺はふと眉をひそめたくなった。 自分もロッサから貰っている時点で言える立場じゃないが、これは明らかに感謝の域をでている。 こいつは俺のなのに。 「ヴェルテ!」 相手はわからないが、それを取り返そうと躍起になっているアーズリーにも少しむかむかしてくる。 だから伸ばされた腕を取って、抱きしめるついでに喚く口を唇で塞いで。 「これがなんだか教えてくれたら返してやる」 掠めただけのキスに飛び上がるこいつに、俺は鼻先が触れる距離で問い詰める。 「っ……いいから、返してくれ」 ぐっと口ごもるのをもう一度口付けてさらに引き寄せるも、言う気はないらしい。 とはいえ、関係ないと突っぱねるのではなく珍しく縋るように言われれば、悪い気もして俺は解放して渋々と差し出す。
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