キスの行く先

13/14
前へ
/223ページ
次へ
「あーわり……」 けど勝手な嫉妬が空回りだったとわかって、ほっとしながら俺は謝りながら箱に手を添える。 「けどよ、だったらあんなに取り返すのに必死になるなよ」 「渡し方というものがあるだろう。阿呆」 しかし原因はこいつにもあるからと言えば、口を尖らせたアーズリーは嫌そうな表情を浮かべている。 それもそうか。 確かに拾っただけでも誤解しそうだなと、ぼんやりと考えていたらつんと袖を引かれた。 なにと視線を合わせようとしたら、それより先に頬に柔らかな感触と小さなリップ音が耳に入る。 突然のことに固まってしまった俺の目の前で仕掛けた当人は、恥ずかしそうに横を向いて耳まで赤く染めていた。 あぁ、そもそもの原因はこれだったけ。 キスをされたのだと気づいたところで、こいつが逃走した理由を思い出す。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加