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もっと主張してもいいのに。
気に病む必要もましてや逃げることもないのにと、俺は箱とアーズリーを見比べて思う。
こんなものまで用意してるんだからさ。
「アーズ」
「……なんだ」
しかしそれはとりあえずあとで言えばいいかと思考の外に追いやって、俺はアーズリーの体を抱き寄せた。
「頬じゃなくてこっちにしないのか?」
静かに背中に回す手に一度抱き返してから、少し体を離して見上げてくるこいつに小さく笑って囁く。
一緒に自分の唇を指で示しながら。
途端にまた真っ赤になるので、からかいがいがあってさらににやけてしまった。
しかし目を伏せたのは一瞬で、また上を向いたアーズリーがちょんと唇を押し当ててくる。
寒さのせいかいつもより強く感じる温もりに、目を細めて遠のくそれを追って俺もキスをするのだった。
end
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