無自覚、自覚

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「おれなんかでいいのか」 のぞき込んでくる瞳を避けて、おれは小声で聞く。 「疑り深いなぁ、いいっつてるだろ」 それにどこまでも明るい返事が返ってくる。 「……わかった」 視線を戻せば、相変わらず至近距離でこちらの反応を待っている。 ここまできてもう逃げる術などないおれは、そんな一言を返す。 「そうこなくっちゃな」 なんだか初めて会った時も似たようなやりとりをしたなとか思っていると、また抱きしめられる。 ―もしかしてとんでもないやつに捕まったんじゃないんだろうか。 頭上で楽しそうに笑う声と、回された腕におれはふとそんなことを考える。 けど、それもまた一興だと思い直し、おれはヴェルテが離してくれるまでその体に凭れることにした。 end
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