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―アーズリー
鬼の霍乱、といったか。
渡された洗面器を持って階段を上りながらおれはそんなことを考える。
あいつが朝からやけに静かだったところからおかしかったのだが、まさか気を失うほど具合が悪いとは思わなかった。
それをなんとか部屋まで運んで、こそこそ交代で様子をみているわけなんだが。
音をたてないよう部屋に入り、傍まで来てもヴェルテはまだ夢の中らしく瞼はきつく閉じられたままだ。
苦しそうだな。
いつも見る寝顔より険しいそれにおれはそっと手を伸ばし額に触れる。
伝わるのは気持ち悪さの残る熱。
手を戻し、洗面器に満たした氷水につけたタオルを絞りその額にのせた。
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