風邪とりんご ver.1

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少しぬるくなったタオルをもう一度洗面器に浸けるために向けた背の後ろで軋む音がした。 「言ったそばから起きあがるのか」 「あー汗かいて気持ち悪いんだよ。着替え取ってくんね?」 肩越しに振り返れば、わずかに上半身を浮かしたヴェルテと目が合う。 思わずまゆをひそめたら口をとがらせるやつが答えるので、おれはすぐ脇にあった棚の引き出しに手を伸ばした。 上から二段目、だったか。 そう口の中で呟きながら引き出し適当に服を見繕っていく。 だが自室並みに物の位置を覚えてることに気付いて。 無意識に覚えるほどに利用する理由が理由なだけにふと恥ずかしくなる。 いや、今は役にたってるわけだし関係ないじゃないか…… ぼうっとしていたら余計なことまで思い出しそうで、おれはこっそり首を振ってヴェルテの方に向き直った。
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