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まだわずかに熱っぽい手のひらに撫でられながら、それでもいつも通りの口調と表情にほっとする。
熱のせいで仕方ないとはいえ、やっぱりこっちの方がこいつらしいな。
あの珍しく余裕のないとげとげしい様子は、自分で思っていた以上に引っかかっていたらしい。
「ま、うつって風邪ひいたら面倒みてやるさ」
「それは悪くないな」
やがて離れた手を追った目と目が合えば、にやりと唇を緩めるやつにおれも笑ってみせた。
……悪くない……
ほんの冗談のつもりで返したのに、結局こいつがまた眠っても隣に居続けたおれはしっかり風邪をもらい受けてしまって。
翌日には言葉のままヴェルテに面倒をみてもらってしまったのだった。
end
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