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「……ズ……おいアズ!」
「ふ?……ぁ、ヴェルテ……」
寝たには寝たが、心地よい睡眠ではなく、頬に微かに走った衝撃におれはのろのろと目を覚ました。
誰かがのぞき込んでいるが、寝起きで合わない焦点ではうまく像が結ばない。
目をしかめていたらさらにおれの耳に聞き慣れた声が届いて、ようやく相手を認識する。
「魘されてたぞ?大丈夫か」
「あ、ああ……」
心配そうに呟いたヴェルテがそっと指で目元を拭っていく。
それで自分が泣いているのに気づいた。
それから起きるかと尋ねる言葉に頷けば体に回された腕に支えられ、ゆっくりと抱き起こされる。
それからもう一度頬を撫でる手を掴めば緩く抱きしめてきて。
「喉渇いた……」
軽く背中を叩くリズムにほっとしながら、顔を上げたおれはただそう告げる。
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