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「もともと俺がうつした風邪だし、気にすんな。つうかこれぐらいでひくほどやわじゃねぇよ」
慌てて押しのけるおれにこいつは楽しそうに表情を緩め、離れざまに指で額を弾かれた。
「ほら、また寝るまで手ぇ繋いでてやるよ」
額を押さえながら目を細めたが、それでも余裕綽々な笑みを崩さないヴェルテはそう言って手を出してくる。
きっといつもなら気恥ずかしくて払ってしまうだろうが、おれはその手を素直に取った。
甘やかされているのに身を委ねるのも悪くない。
ごろりと横になって、少し冷たく感じるヴェルテの手を強く握っておれは目を閉じる。
そしておやすみと囁く柔らかな声におれの記憶はゆるりと夢に溶けていった。
end
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