fragrance

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っと……これ、だな。 それでいつもなら顔を上げて確認するのだが、つい面倒くさがって手だけ伸ばしてボトルを探す。 使う人間が多くとも物の配置が変わることはないから、と真ん中あたりに置かれたボトルのノズルを押し、手のひらにシャンプーをとった。 しかし軽く泡立て髪にあてたところで異変に気づく。 指を動かす度甘ったるい香りが広がるのだ。 自分のでは有り得ない匂いにはっと棚を見直す。 すれば定位置にあったのは見知らぬピンク色のボトルで、自分のは今日に限って端に寄せられていた。 ……ロッサめ、使ったら戻せと…… 見知らぬ、とはいえこんな甘い香料とボトルの柄から誰のかなんて一目瞭然で、洗うのも流すのも忘れて呆然としてしまう。
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