⚠待ちぼうけ

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おれがドアを押す前に勢いよく開く。 えっと顔をあげて、その先にいた人を認めてさらに驚く。 「あれ、アズ」 そこにいたのはまさに待っていたヴェルテ本人。 「なに、帰るとこだったのか?」 「あ、ああ……」 向こうも驚いているようだが、そう尋ねてくるのにおれは頷く。 「なぁ、ちょっとだけ待っててくれね?これ報告してくるから」 「え?あ、おい……ったく」 それにやつは少し考える素振りを見せたあと、おれの肩を叩いてそう言うと、答えも聞かずにカウンターに向かって行ってしまう。 ごく自然に流されたそれに慌てて振り返るが、すでにやつは雑踏の向こう側。 仕方ない、待つか。 ああ言ったのだから、むこうもおれに話があるんだろうと思って、ドアの隣の壁に凭れる。 それに実に単純ではあるが、会えたことでおれの気持ちは少しだけ浮かれていたから。
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