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「この香りは好きだな」
朝だしと笑う顔と香水はよく似合っていて、おれは素直に告げる。
きっと寝ぼけているからと言い訳できるから。
「ならお前にもつけてやろうか?」
「いや。おれじゃ香りが変わる。それにお前がつけてるからいいんだ」
ふぅんと楽しそうに表情を緩めたヴェルテがサイドボードに置かれたアトマイザーを指すのに、おれは首を振って答えた。
あぁ、でもこの匂いに包まれるなら悪くはない、か。
ロッサのには随分辟易したのにと思うが、夜にヴェルテが言ったように恋人だからこその許容なんだと思う。
そうして、横になったままのおれに必要以上に悪戯を仕掛けようとする手を軽く叩いて、起きあがるのだった。
end
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