⚠待ちぼうけ

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「……ズ、おい、待てって、アズ!」 「っ!?……なんで……」 しかし呼び止める声とともに、後ろへぐいと腕を引かれる。 さらに驚いているうちにぎゅっと抱きしめられてしまう。 苦し紛れに首を巡らせれば、肩の向こうに見慣れた赤色の髪が見える。 「っ、離せ!!」 「ヤだ。俺待ってろって言ったじゃねーか」 追っかけてきたのだろうが、今のおれとしては素直に喜べない心境だ。 だからおれは体の前に回された腕をふりほどこうとする。 けどやつ、ヴェルテはますます抱く力を強めて、いじけたような口調で話してくる。 「おれだって待ってたんだ!馬鹿みたいにバーに通って、なのにっ……」 その一方的に約束を反故にされたような言いぐさに、おれはこいつの足を蹴飛ばす。 それで緩んだ腕から逃れ、ヴェルテに向き直すと同時におれは感情をぶちまける。 言ってから我ながらに子供じみてるとは思ったが、構うことはない。 やけっぱちでまくしたてたところで、おれは俯いて息を吐く。
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