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――ヴェルテ
普段はとんと消極的なアーズリーが誘い文句を言うのは貴重だ。
朝からそれに遭遇すれば一日が楽しくないはずがなく。
やっぱり好きだと改めて思う。
「……愛情」
「は?」
そうして日中を街で費やし、帰って早々約束通り部屋へ引き込んで唇を重ねた。
何度も角度を変えて感触を楽しむキスをして離れた折にふとアーズリーが呟く。
確かに恋人に対する情や欲だから間違いないが、突拍子もなくて首を傾げてしまう。
「あ、いや。昔の詩にそんな一節があったのを思い出したんだが」
「ふぅん?」
がこいつも意識して言ったわけではないらしく、はっとしたように瞬いて続けた。
「キスには色々意味があって唇は愛情だったな、って」
「へぇ、初耳だな。なるほどねぇ……他には?」
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