⚠待ちぼうけ

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『じゃあさ……抱かせろよ』 その不意をつかれた問いかけにおれが固まっているのをよそに、こいつは一度軽く口付けると手を取って歩き始めていた。 で、連れてこられたのはホテルの一室。 まだ状況をのみこめないおれはベッドに腰掛けたまま動けずにいる。 どこでどう間違った?いやこれが正しいのか……? 頭の中で情報を分けるが、分けた分だけ訳がわからなくなる。 「アズー」 「な、なんだ」 「やっぱ止めとく?」 そうやっていると、おれの目の前にしゃがみ込んで見上げてきたヴェルテが伸ばした手で髪を撫でながら問うてくる。 「ちょっと勢いでつれて来ちまったし。それにすっごいてんぱってるだろ?」 「……」 問にえっと目を瞬かせていると、こいつはにへらと笑って言葉を続ける。 正直止められるならそうしたい。けどもったいないとか思う自分がいる。 どうなるかわかったものじゃないが、こいつなら構わない。 髪から降りて頬を擽る指におれはするりと納得する。 「止めなくていい」 だからおれはヴェルテの目を見返して、静かに答えた。
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