⚠待ちぼうけ

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「ここ、痕残っちまったのか」 「え?」 けどそれまでの雰囲気から一変し、妙に沈んだ声で言われた言葉におれは首を傾げる。 でも肩口をなぞられ、ヴェルテが何を指しているかに気付く。 それはホットウェルとの闘いで負った傷。 掠っただけであったしすでに塞がってはいるが、銃創は治りにくいものだから。 傷跡を辿るような仕草は、男らしく筋張った指からは想像できないくらい優しくて。 「自分の弱さの結果だ。気にするな」 でもどこか申し訳なさそうに目を伏せ、撫でているやつに、おれはそう呟いて腕を伸ばす。 「いやな記憶だけじゃないし、忘れないですむから。だから……」 そんな顔をしないでくれ。 そのまま首に腕を回しながらおれはこいつに向けて思いを告げる。
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