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「そうだな。俺の言いつけ守らないでつくった傷だもんな」
「なっ……っ、ヴェルテ?」
おれの言葉にこいつは一瞬虚を突かれたような表情を見せたが、それを笑みに変えたこいつはさらりとひどいことを言ってきた。
さっきまで思い悩んだ顔をしていたくせに、と反論し返そうとしたところでぎゅっと抱きしめられる。
どうしたと問い返そうと口を開きかけるのと同時に、肩口に痛みが走る。
「もうこんな傷増やさせねぇからな」
傷跡に歯をたてられたのだと気づいたおれに、ヴェルテはそう耳許で囁く。
「守られるだけはごめんだからな」
「知ってる。俺がそう決めてるだけだ」
その言い方にむっとした返事をすれば、ヴェルテはおれの目を覗き込んで笑って頬にキスを落とす。
やっぱりそういう顔が似合ってる。
また肩口に唇を寄せるやつの背中に腕を回して思う。
「好きだぜ、アーズリー」
そうやっていると再び不埒な動きを始める指に躰を竦めたおれに、顔を上げたヴェルテが呟くように告げる。
口元に緩やかな笑みを浮かべた表情に反則だと思うも、それ以上逆らえる訳もないので、おれもだと返してヴェルテの腕に躰を委ねる。
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