無自覚、自覚

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「おや、お前さん一人かい?」 そんなことを考えながら、カウンターで一人呑んでいるとふっと隣に人が座る気配がする。 見れば男が笑いながら話しかけてくる。 確かソーレと言ったか。 以前ヴェルテが紹介してくれたのを思い出す。 「あいつなら仕事中だ」 「んなの、知ってるさ。ま、せっかくだし話そうや」 一人かと聞いたのだから、あいつが目当てかと思って視線を外して答える。 しかしこいつはあっけからんと笑って、勝手に話し始める。 厄介な物に捕まったなと思いつつ、おれは適当に相槌を打って返していた。 正直おれはこいつが苦手だ。 そもそも賑やかしいのは好きじゃないし、なによりあいつと仲良くしているのが気にくわない。 さてどう切り上げるか。 だんだん付き合うのに飽きてきたおれがそんなことを考え出したときだった。
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