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「なんのつもりだ」
「別に。抱きしめたくなった」
驚いて見上げて問えば、飄々とした答えのあと言葉通り抱きしめられる。
それぐらいならば別段拒む気もないので、おれも抱きついた。
「これで全部俺のもんだな」
「な……」
にを、言い出すんだ。
しかし、さらに耳に吹き込まれたセリフにおれは絶句してしまう。
あまりのことにただ見上げるおれにやつは笑っている。
振り回されてばかりだな。
その笑みに余裕があるように見えたおれは少し悔しく思う。
「……その言葉そっくりそのまま返してやる」
だから意趣返しのつもりで、視線を逸らしそう言い返す。
けどそれにやつは望むところだと言って、頭を撫でるのでおれは結局適わないなと諦めるしかなかった。
end
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