温もり

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部屋の明るさにと微かな音に目を覚ましたおれは、その室温の低さに無意識に傍らで寝ているヴェルテの体に身を寄せる。 もう少し…… 触れたところから仄かな温もりが伝わるが、それだけでは物足りなくてさらにくっついて肩に鼻を押し当てる。 普段なら自分からすり寄るなんてしないが、今は寒さを解消していまいたい。 それに寝てるしとたかをくくっていた。 なのに、ふいに捲れていた毛布を口のあたりまでかけられる。 「っ、起きていたのか」 「んな冷たい鼻を押し付けられたら目も覚めるわ」 さらに首の下に敷いていた腕に毛布の上から肩を抱かれ、慌てて顔を上げればにやりと笑っている瞳と目が合う。 そのヴェルテの言葉におれは自分の鼻に触れる。 確かに冷えた手でも冷たいと感じるくらいだ。 「あぁ、雨か。通りで冷えるわけだ」 ま、いいけどといいながらもう片手で頭を撫でていたやつがふと呟いた言葉におれは首だけ持ち上げ、ヴェルテが見つめる先に目を向ける。
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