温もり

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視線の先にはカーテンのない窓。 そのガラスに雨粒が当たって流れていた。 目を覚ますきっかけとなった音は雨音だったか。 だが冷え込むのは天候だけでなく、この殺風景な部屋も理由の一つじゃないだろうか。 アジトである屋敷の部屋は同じ間取りなはずなのに、こいつの部屋は物が少ない分やたら広く感じる。 だからよけいに寒々しいのかもしれない。 なんて考えていると下から呼ばれたので視線を戻しかけるが、目が合う前にベッドに押し戻され抱き締められる。 「……苦しい」 「寒いよりはいいだろ」 のしかかる重みにそう言えば、笑いを含んだ声の答えと一緒に額に口付けをされた。 ヴェルテの言い分ももっともだし、別に嫌で文句を言ったわけではないので、さらに足を絡めてくるのも黙って受け入れる。 「なぁ、せめてカーテンぐらいかけないか」 そのままとりとめもないことを話していたが、家具の話になったのでおれは思ったことを言う。
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