触れて、確かめて

3/10
前へ
/223ページ
次へ
それに目を丸くすればやつは一瞬きょとんとしたあと、口元に含みのある笑みを浮かべる。 「寝ぼけてたのかよ」 「う、うるさい。ちゃんと確かめないお前が悪い」 どんな返事をしたか定かではないが、ヴェルテがそんな表情をするようなことを言ったようだ。 それだけでも恥ずかしいのに、ヴェルテがいつまでもにやにやとしているのでおれは悪態をついてそっぽを向く。 こいつのことだからもう少しちょっかいをかけてくるかと思えば、案外何もされないのでおれは視線だけ元に戻してみた。 その先でヴェルテは頭からタオルを被って、濡れたままだった髪をふいている。 そのタオルが顔も覆っているためか、おれが見ているのに気付かないのをいいことにやつの体を眺める。 恋人という関係上、裸体など見慣れてはいるがこんなふうにじっくりと見る機会などそうそうない。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加