触れて、確かめて

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鍛え上げられ均整のとれた体は逞しさが漂っていて、思わず見比べた自分の体にため息をつきたくなる。 本当に何をしたらこうなるのか。 「!……ア、アズ?どーした?」 「ん、いや……」 同じようになりたいわけではないが、筋肉質な体は男らしくて少しだけ憧れる。 そんな思いをいだいたおれは眺めているだけでは足りなくなって、やつの腕に手のひらをくっつけた。 不意の接触に驚きうかがうヴェルテに生返事をして、ゆっくりと手を滑らせる。 それに嫌がる素振りがないのをいいことに腕、肩に首筋と無言のままあちこち触れていたら、唐突にすいと手をとられた。 「なんだ?」 「いや、別に」 気に障ったのかと思えば、ヴェルテの方も何を確かめるようにとった手を眺めたり指を絡めている。 だから見上げて首を傾げてみるも、やつは朱色の瞳を細めて笑うだけ。
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