触れて、確かめて

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はぐらかすその瞳を見上げていたが、ふっと手を離され行き場を探す。 それでおれはおもむろに髪の毛へ手を伸ばした。 炎を思わせるような朱い髪は、触れれば熱をも孕んでいるかのように明るく鮮やかな色で。 とはいえ、実際はそんなはずもなく、とくにシャワーを浴びたせいか梳いた指にはひんやりとした感触が残る。 「しかし、思っていたより柔らかいんだな」 「んーそうか?」 さらに普段ワックスで逆立てているせいか固そうなイメージであった髪は、以外に指通りは良くて。 なんとなしに思ったことを口にだしたら首を傾げられた。 「ああ……それに下ろしていると印象も変わるな」 「へぇ、どんなよ」 その動いた拍子に揺れた毛先を持ち上げ、おれも首を傾げヴェルテをまじまじとみる。
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