触れて、確かめて

6/10
前へ
/223ページ
次へ
こちらの反応を待っているのか緩く笑みを浮かべていると、いつもの人相の悪さなど伺えない。 加えて前髪がつり上がった眉と目尻を隠しているのも要因の一つになっているようだ。 大人しそう?いや、もっとこう…… 「なんだか幼く見えるな」 「はっ、幼いぃ!?」 いい表現がなかなか浮かばず、ようやく思いついた答えを言えば、驚いたのか勢いよくのけぞられる。 「あー普段が上に見えるから、年相応になるというかだな」 その驚きようにこっちもびっくりしてしまい、なぜだか慌てるように言葉を繕う。 生きてきた環境の違いか、同い年だと言う割に自分より上に見えるヴェルテ。 だが、今みたいに険しさが薄れるとそうでもない印象を受けたのだ。 「いや、弱そうに見えるといわれるが、んなに変わるもんなんか?」 そんなおれの説明に髪を掻き上げたヴェルテは、腑に落ちないのか小さく唸っている。 そのまま黙り込んでしまわれ、暇になったおれはまた肌に指先をあてた。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加