触れて、確かめて

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程よく日に焼けた素肌の上には新旧、大小入り混じった傷跡がいくつも残っている。 喧嘩っ早い奴だからなんだかんだと生傷が絶えないから仕方ないのかと、傷跡の上を指で撫でながら思う。 それでも明らかに大怪我であっただろう右肩の古い銃創は、一度聞いてみたら珍しく言葉を濁してあやふやにされてしまった。 だからそれ以後、気になるはものの過去のことを尋ねることは控えている。 そんなおれの知り得ないもの、またおれや手下達を庇って受けたなどの傷を確かめるようにしていたが、ふと我に返れば恥ずかしく思えて手を引っ込める。 「次は俺の番な」 なのにその手を捕らえたヴェルテの言葉に顔を上げるも、素早く引き寄せられ抱き締められた。 「っ……ばか、離せ!」 「アズだけ触るのは不公平だろ」 さらにゆるりと腰辺りを撫でる手を振り解こうとするが、耳許で笑い囁くこいつが抵抗を許すわけもなく、結局おれは阿呆と呟くも肩に額を押し当て黙るしかなかった。
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