何食べる?

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人の三大欲求の一つのはずなのに、集中するとつい忘れがちになってしまう食事。 それを何度かヴェルテ達に指摘されている。 だからマスターにもおれが仕事にかまけて、ここ数日ろくに食事をとっていないのを悟られたのかと思ったからだ。 しかしこちらを見る表情からちょうど昼時だからの一言だと察し、あたりさわりのない言葉で辞退する。 それに元々食べる方でもないし、疲れた体には店内の賑やかさと漂う匂いだけで十分一杯になっていた。 早く出てしまいたくて、もう一度マスターに軽く頭を下げて振り向いたのに、いつの間にか来ていたらしいヴェルテが行く手を阻むように立っている。 「よ、また引きこもってたのかよ」 「仕事を受けてただけっ、なにしてる」 無駄なことにだけ目聡いこいつのことだから顔を見られたらそれこそバレてしまいかねないと、揶揄かうように笑っているやつから顔を背け脇をすり抜けようとした。
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