無自覚、自覚

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「座るぞ」 背後からそう言いおいて、返事を待たずにさっさと座り、酒を頼む。 「お前が一人でいるなんて珍しいな」 「別に俺だって一人になりたいときぐらいあるし」 それからふとヴェルテが一人きりなのに気づいて聞けば、そんな答えを返してグラスのビールを呷る。 そのまま沈黙の中で二人酒を呑む。 あれ、こいつこんなに静かな奴だったのか? 「なんか喋れ」 「ちょっ、勝手に割って入ってきたくせにおうぼーだな」 普段は黙れと言いたくなるくらい騒がしいのに、こうやって黙られると妙に居心地悪い。 だからついそんなことを振れば、ややむっとした声の答えが戻ってくる。 見れば声同様、表情も同じ色が浮かんでいる。 「あ、いや…悪い」 「ふ、なんてな。いつも黙れとか言われるからつい」 「!……」 しまったと思って謝れば、笑う声とともにくしゃりと頭を撫でられる。 それに顔を上げれば、楽しそうに笑う顔。 本当よく表情が変わるものだな。 してやられたのに、いらんことを考えてるおれはもうダメみたいだ。
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