46人が本棚に入れています
本棚に追加
冬の気配が日に日に近寄るある日のこと。
少し気の早いクリスマス支度に賑わう街を、俺とアーズリーは並んで歩いていた。
しかし最初から二人で出掛けていた訳ではなく。
もともと互いに違う用事で出掛けていた、その帰り際にばったり出くわしたというだけの話で。
とはいえ、そんな偶然で束の間のデートを楽しまないのも惜しいので、帰りたがるアーズリーを引き止めて今に至る。
「しっかし今日は一段と寒いな」
「……ああ」
まだ昼間なはずなのに、今日は風があるせいか陽の当たる場所でも肌寒く感じる。
頬を撫でる風に俺は開けたままのジャケットの前をかき寄せた。
そしてなんとなく呟けばやや間があいた返事がある。
ちらりとアーズリーの方を見ると首に巻いているマフラーを鼻まで引き上げ、両手をコートのポケットに突っ込んでいる。
最初のコメントを投稿しよう!