寒い日には ver.1

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「んなに寒いの嫌いかよ」 「おれははじめにそう言ったはずだが」 しかもあからさまにムスッとした気配を漂わせているアーズリーに、覗き込めばますます不機嫌そうな声で突っ返された。 確かにせっかくだしと誘った時に寒いからと渋ったのを思い出す。 「じゃあ帰るか?」 「っ、そうは言ってない」 けどマフラーで半分隠れた顔は言うほど嫌そうではないのに、揶揄かうつもりで聞けばなんとも可愛らしい返答がある。 「ならいいけど、そのまま転ぶなよ?」 「そこまで馬鹿じゃない」 さらに口元を布が覆い、声がくぐもっているせいかよけいに強調され、俺は表情が緩むのを覚えるもまた軽口を言って歩き出した。 その後を追って耳に届いた減らず口に堪えきれず笑い声を零す。
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