寒い日には ver.1

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そのままなんとなく二人黙ったまま歩いていたが、度々アーズリーは足を止める。 「どーした」 「眼鏡が曇る」 気付けば日も傾きさらに寒くなりだし、たえきれなくなったのかと十回を数える頃に尋ねればふと眉を顰めながら呟かれる。 そんな理由、と思ったが息を吐く度視界が曇れば歩きにくいのは当たり前なのだろう。 しかし原因は引き上げたマフラーであるから、それを止めれば済む話でもある。 しかし指摘したところで直す気はないらしく、すたすたと歩を進める始末。 ホント転ばなきゃいいが…… 視界不良でかなりのスピードで歩くあいつを追いかけ、先刻からかったことが現実にならないかと心配に思った瞬間だった。 何かにひっかかったのかいきなり前へつんのめる。 「ほれ、言わんこっちゃねぇ」 しかも体勢を立て直せず崩れ落ちる体を慌てて腕を掴んで引き寄せる。
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