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親父はお袋を溺愛してたと思う。
11才年下の華奢で瞳がおっきくて、とびきり優しいお袋は、長身でいつもは無口な親父にいつもそっと連れ添って歩いてた。
寡黙ゆえに、近寄りがたい雰囲気を出す親父にお袋が寄りそう姿は俺の好きなものの一つだった。
お袋が親父にべったりなのかと思ってたが、逆だと気がついたのは中学の入学式。
雨なのにきっちりと若草色の着物をきたお袋と、そのお袋に傘をさすスーツの親父は遠目に見ても、お似合いだった。
来なくて、いいって言ったのに来やがって。
小学校の時の友達に、わざと嫌そうな顔で言った。
くすぐったい胸の奥では、ほんとはとっても嬉しかったのに。
そうだ、その日は帰ったら親父はえらく嬉しそうだった。
酒を呑んだ親父はいつになく饒舌で、めったに呑まないお袋までもちょっと酔っぱらった状態だった。
高2の兄貴とまだ小学生の梨子と鍋を囲みながら、それはそれは楽しく過ごした気がする。
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