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「ぬぅっはぁぁぁぁっ!!」
両腕で頭を守りながら、岩陰に身を隠す。
直後に俺がいた場所にどデカイ鉛玉がブチ落とされる。
……そこの地面だけひっこんでやがんぞ……。
「あんなん喰らったら一瞬でオシャカじゃねぇかよ畜生ッ!」
こんな感じの、国同士の争いに雑兵として徴収されたのはこれで5回目か。死ぬまでこうやって死地スレスレを滑空する徴収地獄ってわけかい。
ふざけんなや。まだ童貞のままだってのに、死ねるかっての。
岩陰から頭だけぴょっこり出してその先を見てみる。
「……あっ」
ひび割れた地面に血が染み込んだ荒野、上半身と下半身がセパレートになっちゃった兵や馬。その肉片を踏みながら鍔ぜり合いをしている雑兵共。
そんな血生臭い光景の中、こちらを見つめる方がお一人様。
「沢山殺して手柄手柄……クヒヒ」
ラリってる敵国の兵と視線が合っちまったみたいで。
そいつの左腰にぶら下がってる巾着は底に行くほど真っ赤に染まっていやがる。……まさか倒した証として人体の一部を――
「お耳、ですかねぇ……」
「ケヒヒッ!!」
野郎が俺にアツアツの視線を送りつけながら、猛ダッシュしてきやがる。
「え、ちょ、こっちみんな、こっちくんな!」
童貞のまま死にたくないから、岩陰に隠れる時に地面に置いておいた支給品の剣を拾いあげる。
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