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ああ……この剣、もう柄と鍔しかねぇんだった……。
さっき戦ってた時にポッキリいきやがって、この岩陰まで必死に逃げてきたんだった。
柄の上丸ごと折れるとかどんだけ安物なんだよコレ!
……とか思ってるうちに、野郎がもうアヘ顔みたいな表情で目前まで迫って来てい、剣を振りかざしてきた。
──死んだな──
そう思って眼をつむった俺。
でも、少したっても痛みは来ねぇし周りの雑音も消えやしねぇ。
「ありゃまぁ……」
恐る恐る眼を開けると、野郎が目の前にアヘ顔のまま頭を矢でぶち抜かれて立ったまま死んでやがった。
この窮地を流れ矢に救われたってか。……まぁそんな事はどうでもいいや。コイツの剣貰ってこ。
股間が湿って温かいのは秘密だ。
戦場を駆けて行く。ブチまけられた誰のだか分からん臓物を踏み、血の水溜まりに片足突っ込んだり、死体蹴っ飛ばしたりしながらひたすら駆ける。
別に相手の兵を殺す為に走りまわってる訳じゃない。ただ、戦うフリをする。
自慢じゃねぇが、今まで何度も徴収されたけど一度も人を殺した事なんざねぇんだわ俺。
手柄とか別にいらないし、国の為に死ぬなら本望だとか、そんなの俺から言わせてもらえば、馬鹿か、って感じだしな。
手柄なんざ雑兵の俺だとよっぽど上の階級でもブッ殺さなきゃ貰えんだろうしな。
「総員、退避ィィィィ!!召喚(サクリファイス)じゃあァァッ!!」
雑音鳴り響く中、突然どこからか拡声機を通じて怒号が辺りに響いた。
……んむ?この声は俺らの指揮官じゃねぇか?
……というか、召喚だ?
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