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4月――。
桜が花びらを咲かせ、小鳥達が春の到来を唄うこの季節。
ツンツンで紫色の髪、身長は174センチ程の少年は、そんな春の陽気に誘われて校内の廊下をふらふらと歩いていた。
そしで女子更衣室゙と書かれた部屋の前までくると、ひとつ呼吸を置く、と。
「きょーは何色かなあ~!」
思いっきりドアを開け放った。
「きゃーーッ!変態っ!」
今日も学園には絹を引き裂く女子の悲鳴と頬肉を張る乾いた音が響くのだった。
そんな声をBGMのように聞き流しながらイブ・アシュフォードは机に寝そべっていた。
窓から見えるのは、よく手入れされた、学園自慢の40本もの桜の木々。それをイブは眺めていた。
「‥‥ああ、平和だ‥」
目を細め微笑みながらそう呟くと小さく欠伸をした。
そして窓の外に広がる桜の、ひらひらと舞い落ちる花びらを、スヤスヤと居眠りするまで見つめていた。
ぎゃあぁぁ~~。
そして再び悲鳴が響く頃、むにゃ、と可愛らしく寝返りを打った。
それから一時経ったころ、顔を腫らした少年が教室のドアを力無く開けた。
「‥‥まったく、毎日毎日飽きないわね」
「みゃあ、これぇがおにぇのにゅっかにゃからねぇ」
「‥‥出来れば私に分かる言葉で話して頂戴、このうじ虫が」
「‥ねぇんしょすゅるよ」
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