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騒然としはじめた教室を背に、私は屋上へとつづく階段を駈け登った。 乱れた呼吸に肩で息をすると、秋空の真っ青な色が目に飛び込んでくる。 まだ強い日差しに、私は思わず目をつぶった。 私は屋上のフェンスによりかかり、空を眺めた。 眺めていると、自然に涙がでてきた。 誰もいない、いまなら、今だけ泣いてもいいかもしれない。 私はポケットから、ガラムのタバコを抜き出し、咥えて100円ライターで火をつけた。 私は、タバコなんて大嫌いだった。 キョウジが教えてくれた、タバコの吸い方。 真似てるだけだけど。 私はこのインドのタバコの甘い香りが、狂おしいほど大好きだ。 キョウジ… ねぇ、どうして私の前から消えたの? どうしたら、いい? 行き場がないよ。 煙を吐き出し、私はキョウジと会ったことを思い出す。 こんなに空が近くに見える、蒸し暑い、こんな日は特に…
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