霞屋―かすみや―

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「これは甲字湯…(こうじとう)肩こりや目眩…あとは月役(月経)の痛みなどに……。こちらは連珠飲(れんじゅいん)と云いまして…」 「朔日丸(ついたちがん)は、ありんすか?」 「……ええ。それでしたらこちらに…」 薬売りは夕霧に言われたもの、朔日丸という丸薬を差し出した。 「……四つ目屋でしかない物だと思っていんした」 「まぁ……私は、こちらの商売もしていますので」 そう言い、三段目の小さな引出しを開けた。 そこには草紙が引き出し一杯に詰められている。 一冊取って開いて見せると…。 「……よう分かりんした」 開いた頁には男女の性交が描写されている絵巻……つまり薬売りが持つそれは春画がだったのだ。 .
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