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「これで十分でありんす」
夕霧の横には薬売りから買った物が並べられていた。
薬売りも代金を受け取り薬を棚に仕舞い込んだ。
「なかなか、品揃えが良くありんすなぁ。でも助かりんしたよ。何せこんな所では行商も少ないでありんすから」
「……そういえば…何故、こんな人里から離れた所に遊郭が?」
此処の遊郭は町中にあるものではなく、町外れ…というよりも山中にある。
それでも、人がいないわけではない。遊女を求める飄客らで絶えないのだ。
「…わちきも、詳しくは知らないでありんすが、此処は役人の目が届かないように作られた所と聞いておりんす。…なんせ、ここは違法だらけの遊郭でありんすから……」
「……なるほど…ね」
しかし……。
「こんな…悲しい所に、わざわざ…作らなくても……ねぇ?」
薬売りは座っている畳の更に下を見据えているかのように、じっと見つめた。
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