27人が本棚に入れています
本棚に追加
「何か、言いんしたか?」
夕霧の不審そうな顔が薬売りを捉えるが、薬売りは畳を睨み付けたまま静かに佇むだけだ。
「いえ……何も…」
適当にはぐらかし、荷を次々としまっていった。
「夕霧殿……一つ…聞きたいことがあるのですが…」
「ここで誰か……亡くなられましたか?」
「…………いえ、誰も。何故そのようなことを?」
いえ、とまたはぐらかし立ち上がった。
「では、また御贔屓に……」
「それはこちらの台詞でありんす。次は遊びに来ておくれなんし」
「………では、またいずれ…」
そうして花魁の部屋をゆっくりと出ていく。
.
最初のコメントを投稿しよう!